ファッショナブル・オリジナル小説「二人だけの秘密」 http://kyobijin.web.fc2.com/



BY F.CHUUDOKU


     オリジナル小説


「二人だけの秘密」

 日曜日の常磐線は、東京に出かける客で込んでいた。松戸から乗り込んだ水島絵里は、大きなビニール袋を抱えな
がらドアを背にして突っ立っていた。三十分後には大好きな渋谷の街を徘徊できるので、立ち通しでも平気だった。車
内の奥へ目を向けると、高校のクラスメートの早川健太が、うつむき加減で客席に座っていた。

 絵里の好きな男子生徒の一人だったが、打ち解けた話はしていない。知らない振りを決め込んだ絵里は、ドアに顔を
向けて車窓に見入った。一ヶ月に一回の割合で渋谷へ行き、親から貰う小遣いの大半を使うのが、今の絵里の楽しみ
で生きがいでもあった。家を出た時はノーマルなジーンズとTシャツ姿の彼女が、渋谷でセクシー系コギャルに変身して
別人のように行動するのだ。

 渋谷で降りたばかりの絵里は、まだ地方の普通の女子高生で、都会の賑わいに圧倒されていた。いつものようにデ
パートの紳士服売場のフロアーへ行き、すいている女子用のトイレに潜り込んだ。ワンピース、靴、ネックレス、化粧道
具、バッグ等が袋に入っている。急いで着替え、簡単なメイクをしてトイレを出た。ヒールの高い靴に足が馴染まない。
変身をしたばかりの気恥ずかしさもあって、しばらくデパート内を歩き回った。

 心の準備をした絵里は、ふくらんだビニール袋を持ってデパートを出た。駅のコインロッカーに近寄って行くと、ヒップ
ホップ系の男が、しゃがみ込んで空いているロッカーを探していた。どのロッカーにも鍵が無い。その時、中年の男が
ロッカーに鍵を突っ込んで荷物を取り出したので、慌てて絵里は空いたロッカーの前に駆け寄った。同時にヒップホップ
の男も走り寄ったので、二人はロッカーの前で正面衝突した。

「水島さんじゃないの?」と、びっくりしたように男が言った。
「早川くん!」と、絵里も驚きのあまり絶句した。
 ジーンズをずり下げてはき、キャップを斜めにかぶっていた男は、早川健太だったのだ。
「学校で見るのと、水島さん、ぜんぜんイメージが違うんだもの」
「早川くんだって、学校じゃ真面目に見えるのに」
「とりあえず一緒にロッカーを使うことにしよう」
 それに同意した絵里は、先に自分の荷物を詰め込んで健太の動きを見守った。
「とにかく、公園通りまで一緒に行こう。歩きながら話をすることにして」
 言うが早いか、健太が駅前の交差点を突き進んだので、後を絵里が追いかけた。

「早川くんが、そんなにオシャレな格好するなんて、思いもしなかった」
「ストレスとか溜まったらさ、渋谷に来てヒップホップの格好するんだ」
「私も同じよ。めいっぱいオシャレして別人になって、ストレスを発散させるの」
 意気投合した二人は、自然に体を寄せ合いながら笑顔で公園通りを歩き始めた。
「親も先公もうるさいから、たまには一人で自由にやりたくなっちゃうんだな」  
「このことは、二人だけの秘密にしない?」
「その方が面白いよ。学校で会った時は、今までみたいに挨拶しかしないんだ」
 そう言った健太が、意を決して絵里の手を握り締めた。そのまま二人は手をつないで歩き始めた。そしてちょっぴり 
大人の気分で渋谷の街をデートした。
 渋谷の駅に戻ってきた二人は、二週間後のデートの約束をして、別々に駅の中へ入った。これからは渋谷で会って
渋谷で別れることにした。二週間後のデートを楽しみにしながら、絵里は「さよなら」と、言って手を振った。
        
                 終わり                  

NEXT
ブランド辞典


恋愛心理テストAIAI無料恋占い
簡単な心理テストで貴女の恋心をズバリ分析

トップへ
トップへ
戻る
戻る