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ファッショナブルお洒落マガジン・トレンドはメリーゴーランド

BY F.CHUUDOKU




トレンドはメリーゴーランド



■多様化したトレンド

 現在のファッションは多様化の時代に入った。オートクチュールのコレクションに見られるハイ・ファッションもあれば、
ストリート・ファッションもある。一般的な既製服のファッションもあり、その中に高級プレタと大衆的なファッションがあ
る。

 50年代頃までは、まず最初にハイファッションがあって、それを元にしてトレンドがつくられてきた。当時のファッショ
ン・トレンドは、年二回のオートクチュールのコレクションが軸になって形成されてきたのだ。

 60年代に入ると、ミニスカートのような伝統を無視した下克上ファッションもあったけれど、やはりオートクチュールが
ファッションの主導権を握っていた。しかし、60年代後半になると、「エル」ファッションのような既製服専門のデザイナ
ーが注目され始めた。

 70年代に入ると、俄然、既製服のデザイナーの仕事が注目されるようになった。カンサイ、ケンゾー、イッセイ、ソニ
ア・リキエル、カール・ラーガーフェルトといったプレタ・ポルテのデザイナーが注目を集めた。一方でオートクチュールの
デザイナーであるカルダン、サンローラン、クレージュ、ウンガロなどが、既製服のコレクションに力を入れ始めた。プレ
タのコレクションの方が、オートクチュールより四ヶ月早いこともあって、デザイナーたちの力の入れ方が違ってきたの
だ。70年代の半ばからは、コレクションがミラノ、ロンドン、ニューヨークで同時多発的に開催されるようになった。81
年には東京コレクションも開催され、東京もフアッションのトレンドの発信地になっていったのだ。




■トレンドはどうして決まるのか

 ファッションはどうして、毎シーズンごとにきちっとトレンドの流行色や形が決まるのだろう?ストリート系ファッションは
別として、流行は予測もされているし、仕掛けもされているのだ。決して自然発生したものではない。

 流行色の場合は、フランスに本部のあるインターカラーという組織が、世界の専門家を集めた会議で二年先の色まで
決めてしまうのだ。日本には「流行色協会<JAFCA>」があり、それが窓口になって日本の繊維業界に情報を伝えて
いる。

 色と並んで重要なのが素材である。インターカラーの情報と、実際の現在の売れ行きや傾向などをよりどころにして、
素材メーカーの各社が一年先の生地を発表する。その生地の売れかたを調べれば、次のトレンドのだいたいの予測
ができる。

 洋服の形になって発表されるのが、販売時期の半年前である。バイヤーやジャーナリストのために、アパレル・メーカ
ー各社がファッションショーや展示会を開く。最も分かりやすくて情報量の多いのは「プレタポルテコレクション」だろう。
「エル」などのファッション雑誌でもその特集が組まれる。

 しかし最近の日本では、ストリートからもトレンドが生まれることが多くなった。109系ギャルファッションやキックボード
はその代表的なものだ。ショップの商品や実際に着ている人間の姿が雑誌で紹介されると、あっという間に広まってい
く。そしてまたたく間にトレンドになってしまうのだ。








■トレンドの寿命は短い

 トレンドはファッションを動かすエネルギーである。流行がなければ、次から次に服を買ったりしないだろう。必要な最
低限の服さえ確保していればいいのだから。

 トレンドの服に対する思いは、ちょうど恋愛に似ている。好きな異性を遠くから眺めている時が一番幸せなように、服
を売場で見ている時のボルテージが最高だ。実際に手に入れてしまうと、少しずつ熱がさめていく。今買う服の大半
が、一年後、いやシーズン後には着ていないことが多い。極端なことを言えば、トレンドの寿命は、買った時点で終わっ
てしまうのだ。

 誰もが新たなトレンドに惚れこむが、やがてそれに飽きると、今度はそれをダサいと感じる。その繰り返しがトレンド
で、まさに終わりの無いサイクルといえる。そのサイクルが、最近はドンドンと加速してきた。東京ー大阪間を特急こだ
ま号が六時間かけて走っていた頃は、ファッションの流行が長かった。三年から十年のサイクルでゆっくりと変化してい
った。

 しかし最近は、数ヶ月でそのトレンドが魅力を失ってしまうことがある。それを知っていながら、別の新しいトレンドに飛
びつくのだ。お金が余っている訳じゃないのに。猫もシャクシも。

 そうした傾向に逆行したヤング層が、最近になって増えつつある。「三丁目の夕日」の影響を受けた所為じゃないと思
うのだが。オードリー・ヘプバーン風のクラシック・スタイル系や、70年代のミュージシャン風の「かまやつ女」等がそれ
だ。トレンドに背を向けて、楽で安上がりで、しかも個性的なファッションをエンジョイしているのだ。 





■スピード病のトレンド

  現在はとにかく生活のスピードが早い。情報化時代のデーター処理速度に合わせるかのように、誰もがせっかちに
なってしまった。自動改札で足を止めようものなら、後ろの人間がブーイングをする。レジの支払いでまごついたりする
と、後ろの人間はさっさと隣のレジへ走っていく。そのまま並んでいた方が早く終わったとしても。

 ファツションのトレンドに対しても、みんなせっかちになってしまった。常に新しいスタイルを追い求めていないことには
気がすまない。そうした傾向は、ファツション業界にとっては、まことに有りがたいことである。売場の商品が次から次と
入れ替わってくれるからだ。

 その一方で、シャネルなどの古いコンサバ系の古着を買ったり、かまやつ女のように流行に背を向けたり、決まった
自分のスタイルをずうっと貫き通す連中もいる。意図的に彼らは時計の針を止めてしまっているのだ。いったんそうした
スタイルを確立すれば、どんなに気分的に楽なことだろうか。

 とにかくインターネットが生活のスピードをアップさせた。インターネットが無かった時代のことを知っている人間なら、
臨機応変にスピード調節をできるのだが、今の若い人にはそれができない。スピード病になるのが嫌だったら、時計を
止めてしまうしかないのだ。各駅停車でゆっくりとした人生を過ごしたい若者にとって、トレンドというのは、実にやっか
いなものなのだろう。

 

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